🐢経済危機下で仮想通貨が人気❓ベネズエラの仮想通貨の現状は❓

カリブ海に浮かぶ小国・ドミニカ共和国に住み、中南米の新興国を舞台に貿易事業を展開する風間真治さん。

今回は、深刻な経済危機下で国主導で仮想通貨「ペテロ」を発行したベネズエラで、

インフルエンサーのひとりとして活躍するグスタボさんへのインタビューです。

HashFlare

南米のベネズエラは、現在深刻な経済危機に陥っている中で、

ビットコインをはじめとした仮想通貨に関する様々な報道が行なわれていますが、

その実情については、なかなか知る機会がありません。

今回、ベネズエラの仮想通貨業界のインフルエンサーのひとりとして、ミートアップやコミュニティの運営、

勉強会の主催などをしているグスタボさんに、お話を伺うことができましたので、

ベネズエラの仮想通貨業界はどのようになっているのか、

仮想通貨の取引がどのように行なわれているのかなど、生の声をお届けしたいと思います。

敷金返金に仮想通貨を望まれて……

風間:グスタボさん、こんにちは。まずは、以前私が経験したベネズエラ人との出来事について、

お話しさせてください。

私がドミニカ共和国で、ベネズエラ人夫婦に賃貸アパートを貸していたときの話です。

その夫妻が仕事の都合で、本国のベネズエラに急遽帰らねばならなくなりました。

その際、アパートの敷金を返金するため、「ベネズエラの銀行口座に送金するから口座を教えてほしい」と頼んだところ、

彼らは米ドルの口座を所有していない、といいます。

また、ベネズエラが経済制裁をされていることもあり、

すぐにベネズエラ国内で米ドルの口座を開くこともできない、とも。それで、どうしようかという話になったのです。

最終的に、彼らが提案してきたのが仮想通貨「LITECOIN(ライトコイン)」での支払いでした。

私もたまたまライトコインを所有していましたのでそれで敷金を返金したのですが、

ベネズエラでの支払いでライトコインが身近に使われていることに、とても驚きました。

実際のところ、どの程度普及しているのでしょうか? 

グスタボ:ははは、ライトコインですか。

ライトコインも、ビットコインほどではないですが、ベネズエラの仮想通貨の中ではかなり知られてはいますよ。

ベネズエラに限らず、中南米で仮想通貨を所有している人がライトコインを欲しい理由は、

おそらく送金や「Localbitcoins.com」を使用する際のコストが安いのが理由だと思います。

Localbitcoins.comというのは、仮想通貨と法定通貨を交換したい人たちのマッチングサイトのようなもので、

何年も前から世界中で使われているサイトですね。ベネズエラでもポピュラーです。

風間:そういえば、先の話のご夫婦も「受け取ったライトコインはどうするのか? 」と聞いたところ、

「Localbitcoins.comを使用して、ボリバル通貨や米ドルに替える」というような話をしていました。

ベネズエラでは経済危機でお金がほとんど流通していない状態です。

そのような中で、ビットコインが広まり始めているという報道を多く耳にしますが、

実際はどうなのでしょうか? 

Localbitcoins.comで交換する際には、米ドルやボリバル通貨など、

法定通貨からビットコインなどの仮想通貨を買いたいという人が多いのですか?

それとも仮想通貨を所有している人が売りたいという需要のほうが多いのでしょうか? 

グスタボ:それはもちろん、ビットコインをはじめとした仮想通貨を買いたいという人が多いです。

仮想通貨は資産防衛手段のひとつ

風間:現状で、ビットコインを買いたい人が多い理由は何でしょうか。

ベネズエラの国内で、何かを買うために、紙幣の代わりに使うことができるのでしょうか? 

グスタボ:仮想通貨を使える店はまだほとんどないですね。

ビットコインの価格の乱高下も激しいですので、多くは実需よりも「金(GOLD)」のように、

資産防衛を目的として購入しています。

なにせ現状、ベネズエラではボリバル札は紙くずですので。

「金」も以前は資産防衛のために人気はありましたが、

国境を超えて持ち出すのに制限が出てきますよね。

金塊をかついで飛行機に乗ることはできませんから。

でも仮想通貨であれば、携帯1台持って、どこの国でも行くことができますので。

実際に、Localbitcois.comの出来高を見てもらえればわかりますが、昨年の夏場を境に急激に増えています。

驚くべきことに、ビットコインの価格が暴落し始めた今年の1月以降、

通常では出来高が減るところ、ベネズエラでは更に増えているんですね。

風間:中南米は歴史的に見てもハイパーインフレ国が多いですし、

そのたびに多くの人のお金が紙くずとして消えてしまったり……。

また、軍事政権が生まれて、資産が取り上げられるなどに直面してきた中南米の資産家たちのなかには、

資産の逃避先としてウルグアイのような小国を利用してきた歴史がありますので、

南米の人たちが仮想通貨を資産防衛手段のひとつと考えるのはわかる気がします。

個人間の信用問題をどうクリアするか

風間:Localbitcoins.comでビットコインを売る人は、その場で現金を受け取る人が多いのでしょうか。

グスタボ:いえ、現金ではなく銀行間での送金がほとんどですね。

どちらかというとベネズエラ国内よりも米国など、国外に口座を持つ人同士のやりとりが多い印象です。

風間:そうなると、お互いにリスクは生じないものでしょうか?

取引所のように、信頼できる第三者が存在すれば、そこで仮想通貨と法定通貨の交換が可能ですが、

取引所は介在しない個人間でのやりとりになりますよね。

そこはうまく信用を担保する方法が成り立っているのでしょうか。

例えば、私があるベネズエラ人をLocalbitcoins.comで見つけて、

ビットコインを売ってもらおうという話になったとします。

どこかで実際に会って販売してもらおうとすると、その前に彼にいくらかのお金を振り込まなければいけませんよね?  

その後、そのベネズエラ人が逃げてしまうことも十分有りうるのかな、思いますが。

Localbitcoins.comにも、ビットコインを販売したい人がいれば彼らが、

第三者預託として預かるエスクローのシステムはあることはありますが、

それでも、買う側の人がいくらか支払った後に、最後は売る側の人が承認しないと送金されません。

私もドミニカ共和国で、

Localbitcoins.com経由で、ビットコインをあるドミニカ人から購入したことがありますが、

こちらが銀行経由で振込みをしてその証明を送っても、

なかなかビットコインを送金してくれないということはありました。

グスタボ:いい質問ですね。確かに、まったく知らない人同士が会って

売買するのは信用の問題をクリアする必要はありますよね。

私は今、仮想通貨の買い方やマイニング(新規発行して所有者となること)の指導なども含めたミートアップを、

隔週で開催していて、コミュニティが広がりつつあるのですが、

そのミートアップではビットコインの歴史から始まり、

各仮想通貨のファンダメンタルズなども勉強して、参加者の仮想通貨リテラシー向上につとめています。

このミートアップで広がってきたコミュニティでは、

ビットコインを買いたいという人がいれば、私などが中心となって少額からでも販売しています。

それ以外にも、米国のCoinbase(コインベース)という取引所でのトレーディングのやり方や、

購入したコインを保管する携帯のウォレットの操作を教えたり、様々な取り組みをしています。

風間:中南米はCoinbaseの利用者は多いですよね。

グスタボさんは現在、ミートアップ以外にはどのような活動をされていますか

グスタボ:コミュニティサイトを立ち上げて、ビデオ会議などで仮想通貨全般のアドバイスや

定期的に有料の講演会、個別のアドバイスなどをしています。

ベネズエラ国内での仮想通貨の市場は確実に増えているのを感じますね。

風間:ミートアップなどで、ビットコインを販売して欲しいという人たちには少額からでも売ってあげているとのことですが、

いくらぐらいを買いたいという層が多いのでしょうか。

グスタボ:100~500ドル近辺が多いですね。

平均すると300ドル前後という感じではないでしょうか。

高額なものは、私は扱っていませんしローカル販売なので高額取引をするのは買う人も怖いと思います。

風間:現在ベネズエラは経済危機でハイパーインフレに陥り、

紙幣が機能していないという状況で、そのなかで仮想通貨が「金」の保有に近い感覚で、

資産防衛のために買われているというのは簡単にイメージできます。

だとすると、プレミアム価格がついていたりはするものでしょうか。

例えば、現在の世界の市場価格より仮想通貨が割高で取引されているということはありますか。

グスタボ:それはありますね。私が販売するケースですと、

市場価格よりマックスで15%ほどプレミアをつけて販売しています。

例えば、市場で1ビットコインが8000ドルのケースですと9000ドルほどの売値を想定して販売したりしています。

平均すると、10%ぐらいのプレミアというか、交換する際の私の手数料になります。

風間:やはりプレミア価格はついているのですね。

中南米はローカル販売では他に経済危機が起きているアルゼンチンやトリニダード・トバゴなど、

2、3カ国ほど他の中南米価格より抜きん出て高く取引されているエリアがありますがどこも経済が厳しく、

米ドルなどのハードカーレンシーの流通が困難な国という印象です。

グスタボさんは仮想通貨と法定通貨の両替商的な役割を担っているのでしょうか。

グスタボ:両替商ではありませんね。実際にそれらを「業」として行なうことは、

ベネズエラ政府がまだ法的にグレーゾーンとしていますので。

今は単純に個人的に買いたい人がいればあくまで個人でのやりとりとして、交換しているということです。

風間:なるほど、ベネズエラの仮想通貨市場で、現在もっともメジャーなのはやはりビットコインでしょうか。

グスタボ:Dash(ダッシュ)という通貨も人気です。

Evan Duffield氏が開発した匿名決済機能を有する仮想通貨なのですが、

現在のベネズエラの仮想通貨業界で2大戦争ともいえるのは、ビットコインVSダッシュです。

ダッシュも特定のインフルエンサーが中心になり、

インターネットだけでなくテレビなどの媒体でも盛んに宣伝していて、

現在ベネズエラの首都カラカスにダッシュを利用して購買できる小売店などが少しずつ出始めて、人気が出てきていますね。

ダッシュのミートアップが開催されていたり、

カラカスではダッシュの開発者を呼んだカンファレンスなども行なわれていて影響力はありますね。

ただ、印象としては、ベネズエラの仮想通貨市場ではビットコインのほうがまだ優勢な気はしますね。

この勢力争いがどうなるかは、まだまだわかりません。

ベネズエラ政府主導の仮想通貨ICOへの期待は?

風間:ベネズエラ政府は今年2月に、政府としてのICO(Initial Coin Offering)でペトロ通貨を発行することを発表しましたが、

米国がこのペトロ通貨での決済使用をすべて認めないとするなど、

暗礁にのりあげている感があります。

ベネズエラ国内のベネズエラ人としての期待などはどうでしょうか。

グスタボ:元々が国外の人向けの投資ですし、

ベネズエラ国内では今のところ期待はほとんどもてないというのが正直なところですね。

ベネズエラ人は政府を信用していません。

ただ政府が公共のテレビ、もしくは新聞などのメディア媒体などを利用してペトロを売り込み始めています。

彼らには権力がありますので、ビットコインVSダッシュの中に割って入って人気を伸ばすことも考えられなくはないです。

風間:以前、ベネズエラのテレビ番組で、「ビットコインなどの仮想通貨は実需も本質的な価値も伴わないイリュージョンであり、

それに対して、ベネズエラのペトロ通貨は石油に裏付けされ、

政府のお墨付きもある」というベネズエラの経済学者に対して、

ビットコイナーの代表みたいな人が「ボリバル通貨も、紙幣を持っていても金と交換できるわけではないし、

本質的な価値はない」みたいなコメントで切り返すという、バトルを見たことがあるのですが……。

グスタボ:私としては、政府に管理されない非中央集権の通貨を、

世界の多くの人が自由に使うようになることが重要だと思います。

中央集権的な通貨はトラストレスではありません。

政府が通貨を完全にコントロールできる保証はないことを、

現在のベネズエラのみならず、その他の国でも、世界の歴史は証明しているのではないでしょうか。

著者紹介:風間真治(かざま・しんじ) 商社の海外営業、中南米のドミニカ共和国駐在を経て独立。現在はカリブ海に浮かぶドミニカ共和国に住みながら、主に中南米諸国でこれから経済が成長していくような国々を頻繁に回り、未知なる客先を訪ね歩いては様々な新規事業の開拓に取り組む日々。中南米ではいくつかの国に会社を作り、貿易事業、港湾の通関業、不動産事業、インターネット事業、中古車販売業などを手がける。