🌿ビットコインは馬脚を現す一方で「ブロックチェーン2.0」が花開く 🌸

🌸週刊ダイヤモンド3月17日号の第二特集は

「金融庁本腰で淘汰必死、揺れる仮想通貨取引所」。

2014年のマウントゴックス事件に続き、

今年1月に国内大手取引所のコインチェックでも不正流出が起きたことで、

仮想通貨に対する不信が再燃している。3月8日、システム面などに不備のある取引所に対して金融庁が一斉に行政処分を下し、

業界再編が予想される今、

仮想通貨はどんな未来を迎えるのか。著書『アフター・ビットコイン』にて、

ビットコインの影の部分を指摘した中島真志・麗澤大学教授に話を聞いた。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 田上貴大)

――この1年、投資家からの仮想通貨への期待が爆発的に高まり、

2017年は “仮想通貨元年”とまで呼ばれました。その熱狂ぶりをどのように感じていましたか。

昨年も、仮想通貨に関する悪いニュースがなかったわけではありません。

中国における取引所の閉鎖や、韓国での規制の厳格化が報道され、

それに伴い、仮想通貨の価格も一時期は下がりました。

ただ、そうした出来事を飲み込んで、価格は上がっていきました。

その要因として、いまだ全取引の3~4割ほどを占める日本人の存在があります。

日本では、「夢の通貨」や「未来の通貨」、「これが世界を変えるんだ」といったバラ色のイメージが先行して、

多くの方が仮想通貨を買い漁った、という印象を持っています。

特に、昨年12月には仮想通貨の代表格である「ビットコイン」の価格が年初の20倍となりました。

これは、事情も知らずただ儲かるものだと思った日本人の投資初心者が、どっと押し寄せたからです。

このように、初心者が殺到してしまう相場は危ないと思っていたところ、

案の定と言いますか、年明け以降にビットコインの価格は半値以下に下がりました。

もっと一方的に落ちるかと思いきや、足元では意外と持ち直していますね。

今年に入り、大手取引所のコインチェックがセキュリティー面の不備により仮想通貨の不正流出を招きました。

こうした出来事をきっかけに、今年は、昨年までは目をつぶられていた仮想通貨の負の側面に焦点が当たり、

仮想通貨の真実がだんだんわかってくる一年になるでしょう。

――仮想通貨の真実ですか。一口に仮想通貨といっても、投資や技術などいくつか側面があり、

これらの要素を分解した上で未来予想をしてもらいたいのですが、

まず投資という側面から、1年後に価格はどうなると思いますか。

それは全然わかりません(笑)。ただ、

昨年当初の1ビットコイン=10万円まで落ちてもおかしくはないだろうと思っています。

そもそも、仮想通貨には相場の指標がありません。

株価には、PBR(株価純資産倍率)やPER(株価収益率)といった指標があり、

例えば「PERの何倍」という表現を用いて、この株が買われ過ぎか、

それとも売られ過ぎかを判断します。

一方の仮想通貨にはこうした指標の計算材料がなく、

みんなが買うから価格が上がる、売るから下がるといった形で、

一方向に振れやすいのが特徴です。

3月19~20日に開催されるG20では、グローバルな規制を議論するとされていますが、

これも自由な取引がしにくくなる、という意味で相場に負の影響が出るでしょう。

――なるほど。同じく投資の側面だと、仮想通貨による事業資金の調達(ICO=イニシャル・コイン・オファリング)についてはどう思いますか。

ICOを行った事業者が配布するトークン(取引所に上場予定の仮想通貨の引換券)に投資する人も多数います。

あれは、健全な市場とはいえないでしょう。

ICOを実施した企業で、成果を挙げたところをほとんど聞いたことがありません。

ICOを行う場合、事業を完遂する責任は明文化されていません。

さらに、資金調達が終わったらウェブサイトをたたんでどこかへ逃げる事業者も出るなど、

詐欺まがいのものが多数を占めています。

株式市場では未公開株は売れないのに、

仮想通貨のトークンなら取引所に上場する前でも売れるのもおかしいでしょう。

ICOは規制が入らない限り、先行きは明るくありません。

●ビットコインはNG! 花開くのはブロックチェーン

――次に技術の側面として、仮想通貨の発行を支える基盤技術のブロックチェーンについてお伺いします。

著書『アフター・ビットコイン』の中でも、ブロックチェーンが仮想通貨と分離して花開くと指摘していますが、

どういう流れで広まっていくのでしょうか。

ブロックチェーンには、使用フェーズが大きく三段階あります。

ブロックチェーンを、仮想通貨の基盤技術として使うのが「ブロックチェーン1.0」。

その先に、国際送金など金融分野に応用するのが「2.0」、

さらに非金融分野まで使用用途を広げた段階を「3.0」と私は分類しています。

昨今の報道を見る限り、仮想通貨の価格や取引所に関するものが多く、

日本では「1.0」の段階への注目度が高いのが現状です。

しかし、すでに世界の金融機関の間では、業務にどうやってブロックチェーンを応用するかの競争が始まり、

時代は「2.0」に差し掛かっています。すべての事業者が世界標準となる技術の開発を狙っていて、

一番になって市場を押さえた事業者の勝ちです。

日本でもSBIホールディングスが送金プラットフォームの実用化に動いていますが、

このような動きが早い事例を除けば、ブロックチェーンが実用レベルで普及するまで、

3~5年は見ておいた方がいいかもしれません。

――世界が「2.0」に移行したと感じたのはいつ頃の話ですか。

SWIFT(国際銀行間通信協会)という国際送金のインフラを担っている団体があり、

毎年、SWIFTが実施しているSibos(サイボス)という国際会議に出ているのですが、ここで変化を感じました。

会議のテーマは毎年変わり、13年と14年はビットコインがメインテーマでした。

ですが、15年からは会議でこの話題を聞かなくなり、代わりに出てきたのがブロックチェーンです。

参加者からは、「ビットコインはもう終わり」「ブロックチェーンは素晴らしい技術だ」という声が挙がり、

極めつきは、17年11月に参加した会議におけるあるセッションでのことです。

「自分の企業でブロックチェーンの実証実験をやっていますか」という質問に対して、

100人ほどいたグローバルな金融機関からの参加者のうち、

8割が手を挙げたことに衝撃を受けました。

ブロックチェーンを使えば、国際送金におけるコストがだいたい10分の1まで削減できると言われていますが、

このような形で、ブロックチェーンが金融機関の業務における本流の部分を変えることへの期待の現れだといえます。

――ブロックチェーンへの期待が高まっていることはわかったのですが、

反対に、ビットコインへの期待が下がったのは、どういった理由からでしょうか。

一つには、「シルクロード事件」の存在があります。

これは、違法薬物の支払い手段にビットコインが使用されたという事件です。

さらに、14年に大手取引所のマウントゴックスで流出事件が起きたことも大きいでしょう。

利用目的が美しくなく、一般ユーザーが仮想通貨を購入する場である取引所の信頼性も今ひとつだとわかり、

金融機関の間で「ビットコインは通貨としては駄目だ」とコンセンサスが形成されたと見ています。

――日本でも、ブロックチェーンの実証実験に取り組む企業はある一方で、まだ花開いている様子を感じないのですが。

そうですね……。それは、今の実証実験がニーズオリエンテッド(顧客の需要志向)ではなく、

シーズオリエンテッド(企業の技術志向)だからなのかもしれません。

つまり、企業が「ブロックチェーンを基に新しいサービスを作ったから誰か使ってみませんか」と言っているようなもので、

このような企業のシーズを押し付ける形の実証実験は、うまく行かないのではないでしょうか。

むしろ、これまで解決できなかった社会的な課題を正しく捉えて、

その分野に対してブロックチェーンを使うべきです。金融機関においては、先ほど述べた国際送金がそれにあたります。

●3つの規制導入で業界を健全化 それでも懸念される流出事件再発

――仰る通り、世界的にはブロックチェーンへの期待が高まっているようですが、とはいえ、

日本ではコインチェック事件を契機に、仮想通貨業界に対する風当たりが強くなりました。

業界として信頼を取り戻すには、規制強化は避けられないと感じているのですが、

どのような規制が必要だと思いますか。

これからの規制は、大きく3つの観点から考えるべきです。

1つ目は、投資用の資産として規制を導入するということです。

現在、仮想通貨を規制している改正資金決済法は、

仮想通貨を支払い手段として規制しているにもかかわらず、

誰も支払い手段として使っておらず、ちぐはぐさが感じられます。

3月に新しくできた仮想通貨取引所による自主規制団体か、

もしくは金融機関向けの安全基準を作っているFISC(金融情報システムセンター)が安全基準を策定して、

個々の取引所に義務付けていくことが必要でしょう。

2つ目がレバレッジの規制です。FXも、レバレッジを25倍から10倍に制限しようと検討しています。

しかし、仮想通貨のレバレッジは野放しです。価格の異常な高騰の裏には、

レバレッジをかけて投機的な取引をする個人投資家層が、

大挙して仮想通貨に参入するという事態が起きていることがあります。

FXのレバレッジが10倍で、仮想通貨は何倍でもよいというのは整合性が取れません。

これは規制した方がよいと思います。

3つ目として、取引記録が追えない、匿名性の高い通貨の取扱を禁止することも考えたほうがいいでしょう。

「ダッシュ」という仮想通貨を例に挙げると、

3人がダッシュを売却した場合、3人分が売却した通貨を一つのプールに入れてゴチャ混ぜにして、

別の3人に売り渡す、「コインミキシング」という手法を取っています。

まさに、マネーロンダリングに使われやすい通貨であり、

取引所がこうした仮想通貨を提供している状況を見過ごしてはいけません。

――仮想通貨が発展する上では、ご自身の出身でもある、日本銀行の動向も気になります。

日銀の腹のうちはどのようなものなのでしょう。

ECB(欧州中央銀行)と合同でデジタル通貨の実証実験などをやっていますが、

あまりフロントランナーになるつもりはないと思います。

他の中央銀行が一斉にデジタル通貨を検討し始めたときに困るので、

今のうちに実証実験をやっているのではないでしょうか。

海外を見ると、すでに紙幣がほぼ使われなくなっているスウェーデンでは、

18年末にはデジタル通貨の導入の有無を決定するとしています。

量的金融緩和策も日銀が導入したあとに米国や欧州で始まり、

マイナス金利政策も欧州が始めたら日本も導入するといったように、

中央銀行は互いに影響を受けあっています。

複数の中央銀行がデジタル通貨を導入すると、日本も含め全世界的に、

紙幣のデジタル化が一気に進むかもしれません。

――総括として、これから日本の仮想通貨業界に起こり得る懸念は何だと見ていますか。

コインチェック事件の再燃を心配しています。

昨年韓国で、ユービットという取引所で不正流出事件が起きました。

そこに至るまでに韓国の他の取引所で不正アクセスがあったのですが、最終的にユービットが狙われました。

「他の取引所のセキュリティーもコインチェックと大差ない」という専門家もいて、

ハッカーに「意外に日本の取引所のセキュリティーは甘いぞ」と思われたら、また狙われるかもしれません。

今度は金融庁に登録済みの16社が狙われてもおかしくありません。

そこで巨額の不正流出が起きたら、金融庁も取引所も、今度こそ言い訳のしようがないでしょう。