「介護地獄」に堕ちないための基礎知識、親が突然倒れた場合の対処の話です。

ある日突然、親が倒れて寝たきりになったら。。

多くのビジネスパーソンにとって、考えたくない状況だろう。だが「そのとき」は確実にやって来る、しかも突然に、だ。いざというとき慌てないために、今からどんなことを心得ておくべきか。自らも介護地獄を経験し、1月24日に新著『親の介護をはじめたらお金の話で泣き見てばかり』(ダイヤモンド社)を上梓する教育・介護アドバイザーの鳥居りんこ氏が、詳しく解説する。

😫身を削った母の介護で 感じた「恩」と「怨」😣

🏃💦2017年春、筆者は「10年超」に及ぶ両親の介護を終えたばかりだ。それはまさに、身を削るような壮絶な経験だった。

🏃💦介護はその期間が誰にも読めず、何年、あるいは何十年の戦いになるのかは神のみぞ知る、ということになる。しかも悲しいことに、親の体のあらゆるパーツが徐々に修復不能な状態になっていき、もはや改善はしないのだという事実を認めざるを得ない日が来るのである。

🙍その終結は「親の死」という永遠の別れでしかない。

 

😊そんな報われない状況がわかっていても、多くの子は体が不自由になった親を必死に介護する。そこに利害などない。あるのは、自分を生んでくれた親に少しでも長く生きてほしい、苦労して自分を育ててくれた親の面倒を見てあげたい、という純然たる「恩」の気持ちである。

 

😣ところが、介護生活が長期に渡るにつれ、子にとってのそれは、己の生活を限りなく浸食してしまう「負担」と感じられがちになる。それが徐々に「怨」の気持ちを生むのである。

このように介護生活は、親への⏩「恩」と⏩「怨」という⏩「2 ON」の間で揺れ動く。その気持ちの綱引きの中で出てくる答えは、「罪悪感」である。親への恩義に報いようとすればするほどに陥る怨みの感情に、子の「罪悪感」は刺激され、心が千々に乱れていく。

😞💨何ともやり切れない話ではあるが、これが筆者の経験した「介護」の現実なのである。

😨💦自分の人生と直接向き合う数少ない機会とも言える、老親の介護。それはある日突然、始まる。あの丈夫で元気だった親に突然、異変が起こり始めるのだ。

😅だが、正確に言えば「突然」ではない。「突然」に思えるだけのことだ。なぜなら、子が「親の老化」について「見ないふり」をしてきた日々、または「認めまい」としてきた日々の積み重ねの結果が、「突然」だからだ。

💦たとえるならば、それは我が身の「初白髪発見」に似た驚きに近い。発見した瞬間は、いきなりそこに存在しているように感じるものだが、それは己の脳に気づきがなかっただけで、毛の方に言わせると「だいぶ前から白くなる準備はしておりましたが?」ってとこだろう。

😅💦「ウチの親に限って……」「まだ大丈夫だろう」という根拠なき楽観論の先にあるものは、「途方に暮れる己の姿」なのである。

🙍子にとって、親の介護は一様に苦しい関門だ。とはいえ、事前に介護に関する情報を仕入れて心の準備をしていた人と、そうでない人とでは、親が要介護状態になったときに対応の面で大きな差が出てくる。後者の場合、リスク管理を怠ってきたという「ツケ」が、あらゆるところで問題を巻き起こしてしまい、結果「介護」をより複雑にしてしまうのだ。

🙆「そろそろ親の健康が心配になってきた」という人は、いざというとき途方に暮れないために、今から何を考えておけばいいのか。また、足もとで突然介護が始まってしまったという人は、これから最低限何をどうすればいいのか――。介護の「生き証人」である筆者が、基本中の基本となる情報を、シミュレーションを交えてお伝えしよう。

🏃💦3割の人はある日突然、 親が倒れて介護スタート

🌱 厚生労働省の「国民生活基礎調査(平成25年)」によると、介護が必要になった主な原因は「脳血管疾患(脳卒中)」が17.2%と最も多く、次いで「認知症」(16.4%)、「高齢による衰弱」(13.9%)、「骨折・転倒」(12.2%)となっている。

 

😨💦つまり、こういうことだ。全体の3割はある日突然、「親が脳疾患か転倒により救急病院に担ぎ込まれた」という一報を受けての「介護スタート」になる。

👉これを「急性期入院」と呼ぶが、90日を過ぎると病院側の診療報酬が一定額の報酬しか付かない「包括払い」になるのと、新しい患者を受け入れるためにベッドを空けたいという2つの理由により、病院から退院を迫られる仕組みになっている。

👉ここで自宅に帰るか、転院先(病院または施設)に移るかの選択をするのだが、行き先は次のようになる。

☝(1)自宅(医療保険介護保険利用:または両方を利用)

☝(2)病院(医療保険利用のため、処置により金額は増減)

☝①回復期リハビリ病棟(マックス180日)

☝②地域包括ケア病棟(マックス60日)

☝(3)施設(介護保険利用のため、要介護認定後、介護度により金額は増減)

☝①介護老人保健施設/略称:老健。要介護1以上。基本的にマックス90日。

月額費用は約10万円~15万円

☝②指定療養型医療施設/2018年4月より「介護医療院」へ順次変換される予定。

👉要介護1以上。今現在は90日という期限がある場合と長期入院可能な場合があり病院により様々。月額費用は約10万円~15万円

☝③サービス付き高齢者向け住宅/略称:サ高住。介護認定なく入居可。敷金(家賃の2~3ヵ月分)+家賃が1月約6万円~17万円、食事代などの生活費は含まず

☝④グループホーム/要支援2または要介護1以上の認知症患者。入居一時金10万円~100万円+月額費用約10万円~30万円

👉💦この他に選択肢として、介護付き有料老人ホーム(特定施設)というものがあるが、その費用は入居一時金がないところから数千万円のところまで様々であり、月額費用は15万円が下限といったところである。

👉👉読者も耳にしたことがあるだろう「特別養護老人ホーム」(略称:特養)は、入所基準は要介護3以上であるが、現在の待機者は約36.6万人(2017年厚生労働省発表)となっており、状況は即入所可能というものではない(月額費用は入居一時金はなく、7万円~15万円が相場)。

☝あきらめてはダメ サポートの仕組みは意外に多い

☝ここまで読んで目の前が真っ暗になった読者もいるだろうが、諦めてはいけない。我が国には介護の面でも(不平不満は山のようにあるにせよ)、様々な手助けによって国民をサポートするシステムがあるからだ。

☝まず、前述のような「親の急性期入院」を経て退院を迫られた場合は、病院内に常駐している「医療ソーシャルワーカー」に相談することが大切だ(相談無料)。ここで、入院中の医療費の相談や退院後の生活、転院先や受け入れ施設の相談などをすることが可能である(小さい病院ではソーシャルワーカーがいない場合もあるが、そのときはまず医師、看護師、事務スタッフなどに相談しよう)。

☝一方で、こうした急性期入院に加え、認知症の診断がおりたり、高齢による不具合などが見られたりした場合、家族がやらなければならないことは「要介護認定」を申請することである。40歳以上の国民は自動的に介護保険料を徴収されているのだが、実際にこの介護保険サービスを受けるためには「申請」をし、「認定」されなければ利用できないからだ。

👉👉手続きはそれほど複雑ではない。まずは介護サービスを受けたいと思っている人物(親)の住所にある役所に「介護保険のことで」と電話する。そして介護認定というものを取るべく、申請の仕方を教えてもらい、用紙に記入し提出。

👉申請をしたら、介護認定調査員が親のところ(自宅、病院、施設など)に来てくれて、親や介護者から聞き取り調査を実施する。同時に主治医には「主治医意見書」というものを書いてもらうように、行政から依頼が行く。

👉そして、コンピュータによる一次判定、介護認定審査会による二次判定を経て、要支援も含めると7段階に分かれた「要介護度」が決定されるのだ。通常、申請から決定の通知までは原則30日以内である。

👉あなたがやることは役所に電話をかけて、👉申請書を出し、👉調査員が来る日に親の実態を正確にわかってもらうために、👉調査に立ち会うこと。あとは、👉認定結果が郵送されて来るのを待つだけだ。

👉「要介護」認定を受けたら あなたはもう1人じゃない

👉そこで「要介護(含む要支援)」という認定が出たら、次に何をするか。

👉ケアマネージャー(介護支援専門員・略称ケアマネ)という、親を担当してくれる介護のプロを誰にするかを決めるのである。

👉ケアマネは「居宅介護支援事業所」に所属しているが、役所の「介護保険担当課」、または「地域包括支援センター(通称包括)」でリストをくれるので、個々の事業所に連絡し、ケアマネとの相性などを見るべく面談を重ねて、信頼できるケアマネを選ぶことが一番大切なことになる。

👉こうした手続きを踏み、👉👉「要介護(含む要支援)」という認定が下りた後のあなたは、もう1人じゃない。ケアマネをはじめとする介護のプロたちがあなたの親のために、あなたという介護のキーパーソンを中心に、チームを組んでくれるシステムができ上がるからだ。

👉要介護認定というものは「要支援」と「要介護」を合わせて7段階に分かれるが(要支援の方が状態は軽く、要介護1→5に進むにつれ、状態はより重くなる)。

👉要介護認定とは心身の状態の重さや介護の手間の多さで決定するとともに介護保険を利用できる上限度額を決める作業でもあるが、自宅介護の場合はその段階に応じて、1ヵ月あたり5万円から36万円までの介護サービスが、1割もしくは2割の自己負担額で利用できる仕組みである。

👉要介護度で決定した利用限度額を超えた場合は自費となる。ちなみに2018年8月より、高額所得者は3割負担になる場合がある。

🐤💨在宅で利用できる 5つの介護サービス

🏃💦ここでは、在宅介護における介護サービスの種類を説明しよう。大きく分けて次の5つがある。

🏃💦(1)介護のプロが自宅に来てくれるパターン

🏃💦オムツ替えや入浴などの身体介護、調理や掃除などの生活支援、看護師やリハビリのプロの訪問もある。

🏃💦(2)高齢者が施設に通うパターン

🏃💦デイサービスといって食事や入浴、ゲームや歓談などをする施設と、デイケアといってリハビリをしながら食事や入浴をする施設、認知症対応の通所施設がある。

🏃💦(3)高齢者が外泊するパターン

🏃💦ショートステイと呼ばれるもので、特養などに短期間入所して食事や入浴、機能訓練などを受ける場合と、介護老人保健施設や病院に短期間入院し、医療・看護・機能訓練を受ける場合に分かれる。

🏃💦(4)住宅改修で自宅の環境整備をするパターン

🏃💦転倒防止のための段差の解消や手すりの設置、引き戸等の扉の取り替えのために20万円を上限として工事費の9割が支給される。

🏃💦(5)福祉用具をレンタルするパターン

🏃💦歩行器やスロープ、車椅子、電動ベッド、体位変換器、徘徊感知機器などが1割、または2割の実費で借りられる。

🏃💦これとは別に「特定福祉用具販売」というものが用意されており、ポータブルトイレや入浴補助用具などが、介護サービスの利用限度額とは別に10万円(同一年度)を上限として購入費の9割が支給される。

🏃💦これらをケアマネが「ケアプラン」として作成してくれるので、同意し、契約したら、サービスが始まる仕組みなのである(ケアプランの作成は無料)

 

🏃💦いかがだろうか。これが「突然の介護発生」に関する大まかな「傾向と対策」である。では、介護初心者がこうした事態に直面しても慌てないよう、胸に刻んでおくべき心得とはどんなものだろうか。

🏃💦介護に負けないための 「2つのJS」と「3ない精神」

🏃💦心得の1つは、「自己申告」「情報収集」の「2つのJS」というものだ。

🏃💦介護用語は難解で、聞き慣れない言葉のオンパレードなので、介護初心者にとっては面食らうことばかりだろう。また、介護の分野でも法律は目まぐるしく変わるばかりか、老親の健康状態も変わりやすいため、当然ながら個々に事情は違ってくる。

🏃💦そのため、介護に当たって「イロハのイ」になるのが、自分の家庭の状況によりカスタマイズした介護サービスを受けるために必要となる、能動的な「自己申告=介護保険申請」と「情報収集」なのである(ちなみに高齢者の状態は変わりやすいので、次回の認定を待たなくても介護認定の区分変更は可能。これもケアマネに言えばOKだ)。

🏃💦2つ目の心得は、「めげない、くさらない、あきらめない」の「3ない精神」。

🏃💦介護では、色々な専門家(たとえば、市役所の人、ケアマネ、包括職員、ソーシャルワーカー、ドクター、ナース、レンタル業者など)から、けんもほろろの対応を取られたり、嫌な思いをさせられたりすることが日常茶飯事で、心が折れることの方が多い(もちろん素晴らしい人もたくさんいるが)。

🏃💦しかし、そこで「諦めない」ということが本当に大事になる。「この人がダメならこの人!」というように、会う人、会う人に自分の家庭のピンチを訴える(介護はゴネた者勝ちでもあるのだ)。

🏃💦そうこうしているうちに、徐々に情報が集まり、我が家の問題点とその解決策がクリアになってくるものなのだ。ある日突然、「ここにこういうボランティアがいるわよ」「あそこに新たに特養が建つらしいよ」(ちなみに新築は入所しやすい)といった耳寄りな情報も入ってくるようになる。

🐤💦介護には、「3ない精神」が必要なのだが、実際はめげて、くさって、あきらめることの方が多いだろう。でも「今日は全く収穫なしだったけど、明日は何か突破口が開けるかも」と信じて、情報をゲットしていくことを止めてはいけない。すでに介護に直面している人でも、今が不満なら積極的に改善していこう(ケアマネも変更はいつでも可能だ)。

🐎💦繰り返すが、あなたにとって親の介護はある日突然、始まる。そのとき途方に暮れないために、ここで述べた基礎知識程度は今から身につけておこう。そのことが、高齢の親の首を絞めてしまいそうになるあなたを救い、ひいては余裕が生まれたあなたによってやさしく接してもらえる親の魂を救うことになる。

筆者はそう信じている。

(教育・介護アドバイザー 鳥居りんこ)