仮想通貨売買損益にかかる税金は❓

🔊ビットコインが史上最高値を記録して終えた2017年は、「仮想通貨元年」とも呼ばれる年となった。2018年の元旦には、朝日新聞の朝刊1面でさっそくビットコインが取り上げられ、今年もその値動きから目が離せない。今やビットコイン取引の4割ほどが円建てとなっているという。

史上最高値をビットコインが記録しつつも相場が乱高下した2017年12月に、国税庁は「仮想通貨に関する所得の計算方法等について」を公表。仮想通貨に関する課税の仕方について、国税庁によって現時点における方針が示された。今しばらくこの方針に従って、納税義務者は税金を払わなければならない(以下の内容は本稿執筆時の法令・通達等に従う)。

👉ビットコインの売却損益は雑所得の扱い

前掲の方針を概説すれば、すでに持つ仮想通貨を何らかの価値のあるものと交換すれば、その時点で売却損益(キャピタルゲイン・ロス)が確定、売却損益は雑所得(厳密にいうと公的年金等以外の雑所得)として扱い、その額に基づいて所得税を課する、ということだ。

仮想通貨は外貨や株式などの金融商品と同様、含み益があったとしても、それを実現させない限り課税されない。絶えず時価評価されて、未実現の含み益に課税されるということもない。

しかし、仮想通貨を日本円に換金しなくとも、持っている仮想通貨で、ある商品を購入したときや別の仮想通貨と交換したときには、あたかも仮想通貨をいったん売却したも同然の形で価額を算定、もし仮想通貨に含み益がある状態なら、それを実現したものとみなして課税する。もちろん、仮想通貨を日本円に換金する際、売却益が発生すれば、課税される。

そのうえ仮想通貨は、金融商品でもなく不動産ではないという法的位置付けから、得た譲渡益は(公的年金等以外の)”雑所得”という扱いとした。

株式や債券などの金融商品なら、譲渡益は、所得税では金融所得(株式等譲渡益)という扱いとなり、他の所得とは合算せずに分離課税される。分離課税される金融所得は、原則として、一律20%の所得税と住民税が課される(復興特別所得税は別途)。だが公的年金等以外の雑所得は、給与所得や年金所得などの他の所得と合算し、その所得金額に応じて累進課税するという、総合課税の対象となる。この累進課税では、課税対象となる所得が4000万円を超える部分に、最高税率の45%が課される。

おまけに、金融所得なら一定の条件を満たせば、売却損(マイナスの所得)を他の金融商品で得た譲渡益や配当と足して相殺するという、損益通算が認められる。が、公的年金等以外の雑所得は、その中における相殺は認められるが、それ以外の総合課税の対象となる所得(給与所得や年金所得など)と、損益通算できない。だから、給与所得を稼いでいる人が仮想通貨で譲渡益を稼ぐと、給与所得に加えて仮想通貨の売却益を合わせた所得を基に、累進課税されることになる。

なぜ仮想通貨の場合、所得税で株式や債券などの金融商品とは、異なる扱いをされるのか。それは、仮想通貨は、金融商品取引法に規定する有価証券等には該当しないからだ(他の先進国でも仮想通貨を金融商品とみなさない国もある)。仮想通貨の譲渡損益の所得税法上の扱いは、外貨の為替差損益と同じく、公的年金等以外の雑所得となった。

👉マウントゴックス破産の余波が・・・

仮想通貨は誕生してからしばらく、わが国において、法的位置付けが与えられていなかった。2016年5月に成立した👉👉「改正資金決済法」で、仮想通貨は日本で法的に位置付けられた。同法第2条の5によると、仮想通貨とは、物品を購入したりサービスの提供を受けたりする際に、不特定多数の人の間で決済・売買・交換に利用できる財産的価値であり、電子的方法により記録されているものである。ただ、この法改正は利用者保護を目的として仮想通貨交換業者を規制することが主で、仮想通貨の私法上の取り扱いを規定したものではなかった。

仮想通貨は、決済手段になりうるし、価値の貯蔵手段にもなりうる。その意味では、まさに「通貨」である。しかし、法律上の通貨とは、通貨の単位および貨幣の発行等に関する法律に規定する貨幣と日本銀行券だけであるから、仮想通貨は「通貨」ではない。

では仮想通貨とは何物なのか。仮想通貨に法的な位置付けが与えられなければ、税金を課すことはできない。確かに前掲のとおり、資金決済法には定義があるが、それだけで課税できるというものではない。

そのうえ、仮想通貨に所有権はないとも解されている判例が、わが国で出されている。それは、2014年に起きた、ビットコイン交換業者大手のマウントゴックス社の破産に絡むビットコイン引渡等請求事件に対して、東京地方裁判所が2015年8月に出した判決だ。

判決の詳細は、法律の専門家に委ねるが、ごく簡単に説明すると次のようになる。原告は、マウントゴックスに預けていたビットコインの所有権を主張し、ビットコインの引き渡しを求めた。それに対して判決は、ビットコインは有体物ではないから所有権を主張することができず、引き渡し請求は認められない、というものだった。結局、この裁判は原告が控訴しなかったため、これで確定。マウントゴックスの破産自体も、ビットコイン取引に衝撃を与えたが、破産後に起こされたビットコインの引渡請求訴訟に対する判決もまた、衝撃を与えたのであった。

判決の理由を考えてみると、さほど難しくない。

われわれが銀行に預けた預金自体にはわれわれに所有権がない。預金者が持つ権利は、所有権ではなく、債権(返還請求権)である。その証拠に、銀行の貸借対照表(バランスシート)には、預金は負債として計上されている。預かったおカネは預金者に返すという意味だ。だから、ビットコインも取引するのに使う交換業者に預けたなら、それは預けた人に所有権があるのではなく、債権があるという理解である。所有権がないものを引き渡せと言われても、その請求は認められない。債権に基づき返還を請求するなら、破産会社の持つ残余財産で応じられる分だけ返還できるが、すべて返ってくる保証はない。

ここで言いたいことは、ビットコイン交換業者の破産うんぬんというよりも、ビットコインをはじめとする仮想通貨は、法的にどう位置付けられているかだ。

仮想通貨によって生じた所得については、前述のように所得税を課すこととした。ならば相続税はどうか。仮想通貨の形で遺産を相続する場合、相続税は課されるのか。

前掲の判例に基づくと(今はこれしか明確に裏付ける法的根拠がない)、交換業者に預けたビットコインには所有権がないと解される。すると、所有権を持つ広義の財産であることを根拠に、相続税を課すことはできない。現行の法令では、資金決済法の定義で仮想通貨が財産的価値を持つとすることを根拠として、相続税法における「財産」に含まれることから、相続される仮想通貨も相続税の課税対象となる、と解されている。

税務当局が見破るのは容易ではない

ただし、話はそう簡単ではない。ビットコインの場合、秘密鍵に対応するアドレスに紐付けられてはいるものの、所有者を特定する仕組みにはなっていない。秘密鍵さえ他人に譲渡すれば、その秘密鍵に紐付けられたビットコインは、譲渡された人のものになりうる。もし被相続人(亡くなった人)が持っていた仮想通貨の秘密鍵を、交換業者を通さずに相対で相続人に密かに渡した場合、税務当局がそれを見破るのは容易ではない。

逆の可能性もある。被相続人が持っていた仮想通貨の秘密鍵を、相続人がその存在を知らずに引き継げなかった場合、被相続人が持っていた仮想通貨を相続できないこともある。

今のところ、税務当局の対応としては、仮想通貨交換業者は資金決済法に基づく登録制となっていて、当局の立ち入り検査、業務改善命令などの監督を受けることとなっているから、それに基づき取引記録の提示を求めることがあり得る(追加の立法措置が必要な可能性もある)。ビットコインでは、すべての取引がブロックチェーン技術によって記録され共有されているから、個人を特定できなくてもどのアドレスが取引に関わったかで、足がつく。

ビットコインをはじめとする仮想通貨は、単なる投機の手段でなく、低い手数料で国際間の決済ができるなど、金融技術を高める可能性を秘めている。わが国において、仮想通貨の法的位置付けがあいまいなゆえに、税制面で中途半端な扱いだ。同じ譲渡益でも、株式ならいくら稼いでも20%で定率だが、仮想通貨は金融商品と法的に位置付けられていないことから、最高税率45%の累進課税。所有権や財産を根拠付ける法律がないこともあり、相続税などの課税にも価値の評価方法が確立できていない。

これから取引がさらに活発になっていくことを考えると、その法的位置付けをより明確にすることは待ったなしだ。